悪夢は終わらない
2026年1月9日(金)新宿ピカデリーほか全国順次公開

INTRODUCTION

デイヴィッド・リンチ没後、1年。初公開から20周年
物議を醸した遺作『インランド・エンパイア』がリンチ監修の元で、4Kレストア化!

2025年1月15日、78歳で生涯を閉じた映画監督デイヴィッド・リンチ。1976年のデビュー作『イレイザーヘッド』以降、“カルトの帝王”として、世界中の映画人と観客を魅了し続けた。長編映画はわずか10本。その最後を飾り、遺作となった本作は、監督・脚本から撮影・音楽・編集に至るまでリンチ自らが手掛けた、最も濃密な一作である。2006年にアメリカで公開、日本では翌年に劇場公開された。その蟲惑的な難解さに満ちた内容に、本人が残した言葉はただ一つ──“about a woman in trouble”(トラブルに陥った女の話)。物語はハリウッドからポーランド、そしてインランド・エンパイアへ。場所と時空を飛び越えて紡がれていく、謎が謎を呼ぶリンチ・ワールドは、公開当時から賛否を巻き起こし、いまも伝説として語り継がれる。
そして2026年1月──リンチ没後1年、そして初公開から20年。二つの節目が重なるそのとき、衝撃の問題作が本人監修のもと4K映像で甦る。

STORY

ハリウッド女優のニッキー・グレース(ローラ・ダーン)は、未完に終わったポーランド映画『47』のリメイク作『暗い明日の空の上で』に出演することになる。やがて共演者のデヴォン・バーク(ジャスティン・セロー)と劇中の設定そのままに現実でも不倫関係に陥り、映画の物語と自身の人生が交錯しはじめる。現実と虚構の境界は次第に失われ、ニッキーの精神は崩壊へと追い込まれていく。

場面写真

MESSAGE

裕木奈江(女優・歌手)

この度、リンチ監督の『Inland Empire』が再上映されること、心よりお祝い申し上げます。
私にとってこの作品はとても思い出深く、特別なものです。
リンチ監督のファンだった私はロサンゼルスでエキストラ募集があると聞き、撮影現場へ向かいました。現場は熱気と活気に満ちていて、本当にエキサイティングな体験でした。
撮影終了後、監督にご挨拶に伺ったところ、「また別の役があったらやってみたい?」と声をかけていただき、驚きと興奮で「もちろん!」と即答したのを覚えています。それからしばらくご連絡をいただけなかったのでもう撮影は終わったものと思っていましたが、ある日連絡が入り、ファックスで長い英語のセリフが送られてきました。
当時の私はまだ英語の勉強を始めたばかりでしたので、「私には無理だと思う」とお伝えしたのですが、監督は「アクセントが面白いからやって欲しい。とにかく全部覚えて一生懸命喋ってみて」と。巨匠に言われては仕方がないので、あの摩訶不思議なセリフを黙々と覚えました。
当時、スタッフさんからは「Web公開用の短編になる予定です」と伺っていたので、まさか3時間もの長編大作として劇場公開された時には心底驚きました。
劇場で鑑賞してさらに驚いたのは、エキストラとして参加したシーンに、一瞬ですが映り込んでいたことです。よかったら探してみてください。
日本での再上映、本当に嬉しいです。
これからも監督の作品が愛され、語り継がれていくことを願っております。

※敬称略

裕木奈江(女優・歌手)

COMMENTS

※五十音順・敬称略

大本有希子(イラストレーター)

大本有希子(イラストレーター)

菊地成孔(音楽家/文筆家)

リンチの間違いない最高傑作。途中何度寝ても、あなたは寝ていない。驚異的なエンドロールの感動を見るための2時間50分。

森直人(映画評論家)/文筆家)

ニーナ・シモンの名曲「シナーマン」が流れる頃には、頭も身体も恍惚のあまり沸騰していた。
市販のデジタルビデオカメラを手にしたことで、脳内に直接プラグを差し込む形になったデイヴィッド・リンチの「極」=超自主映画。
天才奇才の妄想迷宮をめぐる美しく知的で狂的な旅。後続への影響力は凄まじく、同時に誰もこれを超えることはできない。

山中瑶子(映画監督)

突如ひらいた意識の裂け目に落ち、現実への回路がふっと消える。それでも踊っていると妙に楽しくて、もう帰り道なんてどうでもよくなるような多幸感。きちんと取り繕った日常より、この混沌の方がはるかに自然で、心地よい。今こそ、この快感に身を沈めよう!